経理に求められる能力とは?市場価値を高める専門スキルとキャリアパス
月次・年次決算も一人でこなせるようになった。日々の業務には慣れたけれど、ふと「このままで、自分の市場価値は上がるのだろうか?」と、キャリアの停滞感に襲われることはありませんか。
言われたことを正確にこなすだけの「作業者」で終わってしまうのではないかという焦り。それは、あなたと同じように真面目にキャリアを歩んできた多くの経理担当者が抱える、共通の悩みです。
しかし、その悩みは、あなたのキャリアが次のステージへ進むべきだという重要なサインなのかもしれません。AIやシステムの進化により、経理に求められる能力は、単なる事務処理能力から「数字を基に経営の意思決定を支える専門家」へと大きくシフトしています。
この記事では、そんな変化の時代であなたの市場価値を飛躍的に高めるために、経理に本当に求められる能力とは何か、そしてその先にどのようなキャリアパスが拓けるのかを、具体的なステップに沿って徹底的に解説します。
経理に求められる能力とは?市場価値を高めるスキルを徹底解説
経理として日々の業務をこなす中で、「このままで自分のキャリアは大丈夫だろうか?」と、ふとした瞬間に不安を感じることはありませんか。月次・年次決算といった一連の業務に慣れ、一定の経験を積んだ今だからこそ、多くの方が将来のキャリアパスについて悩み始める時期かもしれません。これからの時代、経理担当者には、単なる事務処理能力だけでなく、より専門的で付加価値の高い能力が求められます。この記事では、あなたの市場価値を大きく高めるために、経理に本当に求められる能力とは何かを、基礎から応用まで分かりやすく解説していきます。
簿記は何級からすごい?【未経験・20代向け】転職に有利なレベルと年収、失敗しないための注意点を解説
今の仕事、キャリアの停滞を感じていませんか?
経理経験が5年ほどになると、日々の業務や決算業務を一人でスムーズに進められるようになり、仕事に大きなやりがいを感じる一方で、キャリアの停滞感を覚える方が少なくありません。私自身、多くの経理担当者の方からキャリア相談を受ける中で、似たような悩みを本当によく耳にします。
「このままルーティンワークを続けていても、専門性は高まらないのではないか」「今の会社では昇進も難しそうで、将来が見通せない」といった声です。自身の市場価値がどの程度あるのか分からず、キャリアチェンジへの一歩を踏み出せない方もいらっしゃいます。もしあなたが同じような気持ちを抱えているなら、それはキャリアの次のステージへ進むべきサインなのかもしれません。
AIに負けないために経理に求められる能力
なぜ、多くの経験者がキャリアの壁に直面するのでしょうか。その背景には、経理に求められる能力の変化があります。近年、AIや会計システムの進化により、単純なデータ入力や仕訳といった定型業務は、ますます自動化されるようになりました。その結果、企業が経理担当者に求める役割は、言われたことを正確にこなす「作業者」から、出てきた数字が正しいかを判断できることや、数字を基に経営の意思決定を支え、事業の成長に貢献する「専門家」へとシフトしています。
単に過去の数値をまとめるだけでなく、そのデータから何を読み取り、未来のためにどう活かすか。そうした付加価値の高い働き方が、これからの経理には強く求められているのです。
税理士がAIに奪われる時代は来るのか?AI活用時代のキャリアと対策ガイド
あなたの市場価値を高めるために本当に求められる能力
では、市場価値の高い経理の専門家になるためには、具体的にどのような能力を身につければ良いのでしょうか。この記事では、あなたのキャリアステージに合わせて、明日から意識できる具体的な能力をステップごとに解説していきます。
| この記事でわかること | 具体的な内容 |
|---|---|
| 【基礎編】経理の必須能力 | 全ての経理担当者に求められる、土台となるスキルセット |
| 【応用編】市場価値を高める専門能力 | 年収やキャリアアップに直結する、付加価値の高いスキル |
| 【資質編】経営層から評価される人物像 | スキル以上に重視される、仕事へのスタンスや人間性 |
この記事を最後まで読めば、あなたが次に目指すべき方向性が明確になり、自信を持ってキャリアアップへの第一歩を踏み出せるようになるはずです。一緒に、あなたの可能性を広げるためのヒントを見つけていきましょう。
【基礎編】まず押さえたい!経理の土台となる3つの基本能力
経理のスキルは、家を建てるのと同じで、強固な土台の上に専門的な知識を積み上げていくことで完成します。応用的なスキルやキャリアアップの話をする前に、まずは全ての経理業務の基礎となる「スキルのピラミッド」を理解しておきましょう。
管理会計・財務戦略・IFRS・内部統制・M&A・組織マネジメント など
簿記・会計知識 / Excelスキル / コミュニケーション能力
正確性・責任感・学習意欲・論理的思考力 など
このピラミッドが示すように、高度な専門スキルも、まずは「簿記・会計」「Excel」「コミュニケーション」という3つの基礎スキルがなければ成り立ちません。そして、そのさらに下には、経理担当者としての資質が求められます。ここでは、全ての経理担当者が必ず押さえておくべき「基礎スキル」について、詳しく解説していきます。
正確性とスピードを両立する計数処理能力
経理の仕事において、数字を正確かつ迅速に処理する能力は、最も基本的でありながら、最も重要なスキルです。なぜなら、経理が作成する財務データは、経営陣が会社の舵取りを判断するための、いわば「羅針盤」そのものだからです。このデータに少しでも誤りがあれば、会社全体の意思決定を誤らせる大きなリスクになりかねません。
このジレンマは、多くの経理担当者が抱える悩みです。しかし、会社の信頼を支えるためには、正確性とスピードの両立が不可欠です。日々の業務の中で、自分なりのチェック体制を確立したり、ショートカットキーを活用して作業時間を短縮したりと、常に改善を意識することが、この能力を高める第一歩となります。
会計ソフトからITツールまで使いこなす実践力
現代の経理業務において、会計ソフトを使いこなせることはもはや当たり前です。それに加えて、特にExcelをどれだけ効率的に活用できるかという実践的なITスキルが、業務の生産性を大きく左右します。これらのツールを使いこなすことで、単純作業の時間を大幅に削減し、より付加価値の高い分析や企画業務に時間を使うことができるようになります。
【経理必須】まず覚えるべきExcel関数10選
数ある関数の中でも、以下の10個は経理業務で特に頻出します。これらを使いこなせるだけで、作業効率は劇的に向上します。
| 関数名 | 主な用途 |
|---|---|
| VLOOKUP / XLOOKUP | 勘定科目コードから科目名を自動表示するなど、データ照合・抽出の必須スキル。 |
| SUMIF / SUMIFS | 特定の条件(勘定科目別、部門別など)に合致する金額だけを合計する。 |
| COUNTIF / COUNTIFS | 特定の条件に合致する取引の件数を数える。 |
| IF / IFERROR | 条件によって表示を変えたり、エラー表示を制御したりする。 |
| ピボットテーブル | 大量の仕訳データから、月別・科目別・部門別の集計表を瞬時に作成する。 |
| ROUND / ROUNDDOWN / ROUNDUP | 消費税計算などで発生する端数を、ルールに従って処理する。 |
| EOMONTH | 支払期日の計算など、月末の日付を自動で求める。 |
| TEXT | 日付や数値を、指定した表示形式の文字列に変換する。 |
【作業が3倍速くなる】経理が覚えるべきショートカットキー
マウス操作を減らし、ショートカットキーを使いこなすことは、スピードと正確性を両立させるための基本です。まずは以下の操作からマスターしましょう。
| Ctrl + C / V / X | コピー / 貼り付け / 切り取り |
| Ctrl + Z / Y | 元に戻す / やり直し |
| Ctrl + S | 上書き保存 |
| Ctrl + 1 | セルの書式設定を開く |
| Ctrl + 矢印キー | データの端まで一気に移動 |
| Ctrl + PageUp / PageDown | シート間の移動 |
| Alt + E → S → V | 形式を選択して貼り付け(値貼り付けなど) |
| Alt + Enter | セル内での改行 |
これらのツールを積極的に学び、日々の業務に取り入れていく姿勢が、これからの経理担当者には不可欠です。
Excelのルーティンを関数で効率化|必ず覚えておくべき関数15選
法改正をキャッチアップし続ける学習姿勢
税法や会社法、労働法規など、経理に関連する法律や制度は毎年のように改正されます。最近では、インボイス制度や電子帳簿保存法など、実務に大きな影響を与える変更が続きました。これらの最新情報を常にキャッチアップし、知識をアップデートし続ける学習姿勢は、経理担当者の生命線とも言える能力です。
【業務シーン別】経理に必要な法律知識
「法律」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、まずはご自身の担当業務にどの法律が関わっているかを理解することから始めましょう。
| 関連する法律 | 主な業務シーン | なぜ重要か? |
|---|---|---|
| 法人税法 | 年次決算、税務申告 | 会社の利益に対する税金を正しく計算し、申告・納税するために必須の知識。 |
| 消費税法 | 日々の取引、請求書の発行・受領 | インボイス制度への対応など、日々の取引における消費税の扱いを正しく処理するために必要。 |
| 会社法 | 決算承認、株主総会の運営、配当金の支払い | 株式会社の運営に関する基本的なルール。決算書の承認プロセスや役員報酬の決定などに関わる。 |
| 金融商品取引法(金商法) | 有価証券報告書の作成、適時開示(上場企業) | 上場企業が投資家保護のために遵守すべき情報開示のルール。 |
| 労働基準法 | 給与計算、残業代の計算 | 従業員の給与や労働時間に関するルール。未払残業代などの労務リスクを防ぐために不可欠。 |
経理スキル習得のロードマップ:担当者から専門家への3ステップ
これまで見てきた「基礎スキル」から、この先で解説する「応用スキル」へとステップアップしていくためには、どのような順序で、どのくらいの期間をかけて学習と経験を積んでいけばよいのでしょうか。ここでは、市場価値の高い経理人材になるための、具体的なスキル習得ロードマップを3つのステップでご紹介します。
STEP1:基礎固め(経験0~1年)
まずは、経理担当者としての土台を固める期間です。言われたことを正確にこなせるようになることが目標です。
- 資格:日商簿記3級を取得し、会計の基本ルールを体系的に理解する。
- 実務:日次業務(仕訳入力、経費精算など)に慣れ、ミスなく処理できるようになる。
- IT:Excelの基本的な関数(SUM、AVERAGEなど)と、ショートカットキーを覚える。
STEP2:応用力の養成(経験1~3年)
日次業務に加え、月単位のサイクルで動く業務を主担当として任される段階です。会社の数字の全体像が見え始めます。
- 資格:日商簿記2級を取得し、工業簿記や連結会計の基礎を学ぶ。
- 実務:月次決算を主担当として一人で回せるようになる。年次決算の補助にも関わる。
- IT:Excelの応用関数(VLOOKUP、SUMIFなど)やピボットテーブルを使いこなし、データ集計・分析を行う。
STEP3:専門性の深化(経験3~5年以降)
一担当者から、より経営に近い視点を持つ専門家へと進化する段階です。付加価値の高い業務に挑戦します。
- 資格:日商簿記1級や税理士科目合格など、より高度な資格に挑戦する。
- 実務:年次決算を主導し、税務申告や監査法人対応も担当する。管理会計(予算策定、予実分析)の領域にも足を踏み入れる。
- IT:RPAツールやBIツールを導入・活用し、経理部門全体の業務効率化を提案・実行する。
【応用編】年収・キャリアを格上げする!経理に求められる専門能力4選
経理の土台となる基礎能力を身につけたあなたが次に見据えるべきは、自身の市場価値を飛躍的に高めるための「専門能力(応用スキル)」です。これからの経理は、ただの記録係ではありません。経営のパートナーとして、会社の未来を創る役割が期待されています。
では、「基礎スキル」と「応用スキル」では、求められるレベルやキャリア、年収にどのような違いがあるのでしょうか。
| 基礎スキル | 応用スキル | |
|---|---|---|
| 対象者 | 全ての経理担当者 | 中堅以上の担当者、管理職候補 |
| 必要な経験年数(目安) | 0~3年 | 3年以上 |
| 想定年収(目安) | 300万円~500万円 | 500万円~800万円以上 |
| スキルの方向性 | 正確に過去の取引を記録・処理する能力 | 会計情報を基に、未来の経営判断に貢献する能力 |
基礎スキルは、いわば「経理として仕事をするための前提条件」です。一方、応用スキルは、あなたを単なる「作業者」から、年収やキャリアを格上げできる「専門家」へと導くための鍵となります。ここでは、その代表的な4つの専門能力をご紹介します。
経営の意思決定を支える「管理会計」の視点
あなたの市場価値を大きく高める能力の一つが、「管理会計」の視点です。これは、過去の実績を外部へ報告する「財務会計」とは異なり、社内の経営陣や事業責任者が未来の意思決定を下すために必要な情報を提供する会計分野です。
その気持ち、よく分かります。簡単に言えば、財務会計が「外部向けの成績表」だとすれば、管理会計は「社内向けの作戦会議資料」です。「どの事業が儲かっているのか」「この新製品の価格はいくらが妥当か」「どうすればコストを削減できるか」といった経営の具体的な課題に対し、数字の裏付けを持って答えを示すのが管理会計の役割です。この視点を持つことで、あなたは経営層にとって不可欠なビジネスパートナーになることができます。
| 管理会計の主な業務 | 経営への貢献 |
|---|---|
| 予算策定・予実管理 | 会社の目標達成に向けた道筋を示し、進捗を管理する |
| 原価計算・原価管理 | 製品やサービスのコストを正確に把握し、利益改善につなげる |
| 事業部別損益計算 | 各事業の収益性を評価し、経営資源の最適な配分を促す |
会社の成長を左右する「財務戦略・資金調達」の知識
会社の成長に欠かせない「血液」とも言える資金を、いかにして調達し、管理・運用していくか。それを計画し実行するのが「財務」の領域です。特に、IPO(株式上場)を目指す企業や成長著しいスタートアップでは、財務戦略や資金調達の知識を持つ人材へのニーズが非常に高まっています。
日々の経理業務に加えて、キャッシュフローの管理、資金繰り表の作成、金融機関との折衝、さらには資本政策の立案など、より経営の中枢に近い業務を担うことになります。これらの経験は、あなたのキャリアにおいて非常に強力な武器となり、CFO(最高財務責任者)への道を開く可能性も秘めています。
グローバルで活躍するための「国際会計基準(IFRS)」の知見
もしあなたが将来的にグローバル企業で活躍したい、あるいは海外展開を進める企業でキャリアを築きたいと考えているなら、「国際会計基準(IFRS)」の知見は大きなアドバンテージになります。IFRSは、世界中の資本市場で使われる「会計の共通言語」であり、海外に子会社を持つ企業や、海外投資家からの資金調達を検討している企業で導入が進んでいます。
そう思うかもしれません。しかし、IFRSの知識を持つ人材はまだ少なく、非常に希少価値が高いのが実情です。今は直接関係なくても、この知識を身につけておくことで、将来の転職市場において、他の候補者と大きく差をつけることができます。キャリアの選択肢を世界に広げるための、未来への投資と言えるでしょう。
組織の信頼を守る「内部統制・監査対応」の経験
上場企業やその準備企業において、経理に求められる能力として特に重要視されるのが、内部統制の構築・運用と、監査法人に対応する経験です。内部統制とは、企業の不正やミスを防ぎ、業務の正しさと効率性を確保するための社内ルールやプロセスのことです。
具体的には、業務フローの整備や職務分掌の明確化、J-SOX(内部統制報告制度)への対応などが挙げられます。また、決算の信頼性を担保するために行われる会計監査において、監査法人からの質問に的確に答え、必要な資料を準備する監査対応の経験も、あなたの専門性を証明する貴重な実績となります。これらの経験は、経理部門のマネ-ージャーや内部監査といったキャリアパスにも繋がっていきます。
スキルだけじゃない!経営層から本当に求められる経理の資質
これまで、市場価値を高めるための具体的なスキルについてお話ししてきました。しかし、どれだけ高度な専門スキルを持っていても、それだけでは経営層から真に評価される人材になることは難しいかもしれません。私が多くの経営者と話す中で感じるのは、彼らがスキルと同じくらい、あるいはそれ以上に、その人の仕事に対するスタンスや人間性を重視しているという事実です。専門スキルを最大限に活かすための「土台」となる、これからの経理に求められる3つの資質について見ていきましょう。
数字の裏側を語れる「経営目線」と「事業理解力」
経営層が経理担当者に求めているのは、単に「先月の売上は〇〇円でした」という数字の報告ではありません。彼らが本当に知りたいのは、「なぜその数字になったのか」「その数字は事業にとって何を意味するのか」そして「次に何をすべきか」ということです。つまり、数字の裏側にあるストーリーを語れる「経営目線」と、それを支える深い「事業理解力」が求められています。
例えば、「広告宣伝費が増加している」という事実だけでなく、「新商品のプロモーション強化のために、Web広告に投資した結果であり、そのおかげで売上が〇%伸びている」と事業活動と結びつけて説明できれば、その報告の価値は格段に上がります。常に「なぜ?」を問い、自社のビジネスモデルやお金の流れを理解しようと努める姿勢が、あなたを経営のパートナーへと引き上げてくれるのです。
現状維持を良しとせず、業務を改善する「変革への意欲」
「これまでずっとこのやり方でやってきたから」という言葉は、成長を目指す企業にとっては停滞を意味します。特に経理部門は、伝統的な手法が根強く残っていることも少なくありません。だからこそ、経営層は現状維持を良しとせず、常に業務をより良くしようと改善を提案・実行できる「変革への意欲」を持つ人材を高く評価します。
その課題意識こそが、変革の第一歩です。例えば、経費精算システムの導入を提案して承認プロセスを迅速化したり、請求書を電子化してコスト削減とテレワーク対応を実現したり。たとえ小さな改善でも、会社全体の生産性向上に繋がる提案は、あなたの評価を大きく高めます。日々の業務の中に「もっと良くできる点はないか?」と問題意識を持つことが、この資質を伸ばす鍵となります。
| 業務改善の視点 | 具体的なアクション例 |
|---|---|
| ペーパーレス化 | 請求書や領収書の電子化を推進し、印刷・保管コストを削減する |
| システム導入 | クラウド会計や経費精算システムを導入し、手作業を減らす |
| 業務フローの見直し | 申請・承認のプロセスを見直し、不要なステップをなくす |
経営層や他部署を巻き込む「コミュニケーション能力」
経理の仕事は、決して一人で完結するものではありません。予算策定のためには各事業部との調整が必要ですし、経費精算のルールを徹底してもらうには全社への協力依頼が不可欠です。どんなに優れたスキルや改善案を持っていても、それを周囲に理解してもらい、協力を得られなければ絵に描いた餅で終わってしまいます。だからこそ、経営層や他部署を巻き込み、物事を円滑に進める「コミュニケーション能力」が極めて重要になるのです。
ここで言うコミュニケーション能力とは、単に話が上手いということではありません。営業部門からの経費に関する質問に丁寧に答えたり、法改正の重要性を経営陣に根気強く説明したりといった、相手の立場や知識レベルに合わせた対話ができる力のことです。この能力があって初めて、あなたの専門スキルは組織の中で真価を発揮するのです。
求められる能力を活かせる!経理のキャリアパス具体例
これまで見てきたように、経理に求められる能力を身につけることで、あなたのキャリアの可能性は大きく広がります。今の会社で昇進を目指す道もあれば、専門性を武器に、より良い条件の企業へ転職する道、さらには独立という選択肢も見えてきます。ここでは、経理の経験を活かした代表的な3つのキャリアパスをご紹介します。あなたがどの道に最も心惹かれるか、想像しながら読み進めてみてください。
組織を率いるリーダー「経理マネージャー・CFO」への道
一つ目の道は、チームや組織を率いるリーダー、つまりマネジメントのキャリアです。経理担当者として現場の経験を積んだ後、チームメンバーの育成や業務全体の進捗管理を担う「経理マネージャー」を目指します。このポジションでは、個人のスキルだけでなく、チーム全体のパフォーマンスを最大化させるためのリーダーシップやマネジメント能力が求められます。
そのように感じる方も多いかもしれません。しかし、マネージャーの役割は、メンバーを動かすだけでなく、経営層と現場の「架け橋」となり、会社の意思決定に深く関与できる非常にやりがいのあるポジションです。そして、その先には、経理・財務部門のトップである「CFO(最高財務責任者)」というキャリアも見えてきます。CFOは、企業の財務戦略全体に責任を持ち、経営者と一体となって会社の未来を創っていく、まさに経営の中枢を担う存在です。
専門性を極める「税務・財務スペシャリスト」という選択
必ずしも全ての人がマネジメントの道に進むわけではありません。リーダーとして組織をまとめるよりも、特定の分野の知識やスキルをとことん追求したいという方は、「スペシャリスト」としてのキャリアを築く道があります。
例えば、以下のような専門職が挙げられます。
| スペシャリストの例 | 主な役割 |
|---|---|
| 税務スペシャリスト | 法人税や消費税などの税務申告、タックスプランニング、税務調査対応を専門に担う |
| 財務スペシャリスト(トレジャリー) | 資金調達、資金繰り管理、M&A、IR(投資家向け広報)などを専門に担当する |
| IFRSスペシャリスト | 国際会計基準(IFRS)に基づく決算業務や、導入支援などを専門に行う |
これらの専門性は市場価値が非常に高く、事業会社だけでなく、会計事務所やコンサルティングファームなど、活躍の場も多岐にわたります。
独立も視野に「経営コンサルタント」としてのキャリア
三つ目の道は、会社組織に所属するのではなく、独立して「経営コンサルタント」として活躍するキャリアです。経理・財務の専門知識と、これまで培ってきた事業理解力を活かし、複数の企業の経営課題を解決するサポートを行います。例えば、中小企業のCFO代行として財務戦略を支援したり、スタートアップのバックオフィス体制構築を請け負ったりと、働き方は様々です。
もちろん、会社員とは異なり、自分で仕事を開拓していく必要があり、収入が不安定になるリスクもあります。しかし、働く時間や場所、関わる案件を自分で選べる自由度の高さは、何にも代えがたい魅力でしょう。多くの企業の経営に深く関わることで、会社員時代とはまた違った視点や経験を得ることができます。経理としての経験は、企業の経営状態を正確に把握し、的確なアドバイスを行うための強力な基盤となるはずです。
自身の市場価値を知り、最適な一歩を踏み出すために
ここまで、経理に求められる能力から、その先のキャリアパスまで、様々な角度からお話ししてきました。この記事を読んで、ご自身のキャリアについて多くのことを考え、感じられたのではないでしょうか。大切なのは、ここで得た知識を基に、「次の一歩」をどう踏み出すかです。まずはご自身の現状を客観的に見つめ直し、理想のキャリアに近づくための最適な道筋を探っていきましょう。
「自分のキャリア、このままで良い?」と感じたら
「求められる能力は分かったけれど、今の自分にそれが備わっているのか分からない」「どんなキャリアパスが自分に合っているのか、一人では判断できない」この記事を読み終えて、今そんな風に感じているかもしれません。キャリアに関する悩みは非常に個人的で、正解がないからこそ、一人で抱え込んでしまうと、なかなか答えが見つからないものです。
その漠然とした不安や疑問は、キャリアを見つめ直す上で非常に大切な出発点です。その気持ちを放置せず、具体的な行動に移すことが、停滞感から抜け出し、未来を切り拓くための第一歩となります。
まずはキャリアのプロに相談してみませんか?
一人で悩んでしまった時は、第三者の客観的な視点を取り入れることが、状況を打開する大きな助けになります。特に、キャリアに関する悩みは、その道のプロフェッショナルである転職エージェントに相談してみるのがおすすめです。転職を前提としていなくても構いません。あなたのこれまでの経験やスキルを客観的に評価し、現在の市場でどのような可能性があるのかを教えてくれるはずです。
多くのエージェントは無料でキャリア相談に応じてくれます。自分のキャリアの棚卸しを手伝ってもらったり、今後のキャリアプランについて壁打ち相手になってもらったりするだけでも、視野が大きく広がるはずです。
東海地区の管理部門に強いクルーが、あなたの悩みに寄り添います
もしあなたが東海地区でのキャリアを考えているなら、ぜひ私たち株式会社クルーにご相談ください。私は10年以上にわたり、この地域で管理部門・士業分野専門のキャリア支援に携わってきました。この記事でお伝えしたような、企業の成長フェーズや経営層が本当に求めている人物像を深く理解しているからこそ、求人票だけでは分からないリアルな情報を提供できます。
転職ありきのご相談である必要は全くありません。「自分のキャリアについて、少し話を聞いてみたい」そんな気軽な気持ちでご連絡いただけると嬉しいです。あなたのこれまでの頑張りを正しく評価し、これからどんな可能性があるのかを、一緒に見つけていくパートナーでありたいと考えています。あなたの次の一歩を、全力でサポートさせてください。
お気軽にお問い合わせください
【年代別】経理に求められる能力とキャリアステージ
経理として求められる能力は、キャリアステージによって大きく変化します。ご自身の年代でどのようなスキルが期待され、次のステップに進むために何をすべきかを理解しておくことは、長期的なキャリアプランを立てる上で非常に重要です。ここでは、年代別に求められる能力の目安をご紹介します。
| 年代 | 期待される役割 | 身につけるべき主要スキル | 目指すべき資格(例) |
|---|---|---|---|
| 20代 | 担当者レベル | ・日次、月次業務の正確な処理能力 ・簿記2級レベルの会計知識 ・Excelの基本~応用関数 |
日商簿記2級、FASS検定 |
| 30代 | 中堅・リーダーレベル | ・年次決算、税務申告の主担当スキル ・管理会計(予算策定、予実管理) ・後輩の指導、チームリーダーシップ |
日商簿記1級、税理士科目合格 |
| 40代以降 | 管理職・専門家レベル | ・経理部門全体の組織マネジメント ・財務戦略の立案、資金調達 ・経営陣への戦略的提言 |
公認会計士、USCPA、中小企業診断士 |
よくある質問
経理に向いている性格・特徴は?
経理に求められる人材は?
経理職に求められるものは何ですか?
