経理は本当に売り手市場?【プロが解説】転職を成功に導く3つの理由と戦略 - 管理のミカタ

経理は本当に売り手市場?【プロが解説】転職を成功に導く3つの理由と戦略

経理は本当に売り手市場?【プロが解説】転職を成功に導く3つの理由と戦略
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「経理は売り手市場」
最近、転職サイトやニュースでよく目にするこの言葉に、「本当なのだろうか?」「自分の経験でもチャンスはあるんだろうか?」と、期待と少しの不安を感じていませんか? 日々の決算業務に追われる中で、ふと「このままでいいのかな…」とキャリアに迷ったり、同年代の活躍を聞いて、自分の市場価値が気になったりすることもあるかもしれません。 結論からお伝えします。 確かな実務経験を持つ経理人材にとって、現在の転職市場は、間違いなく「売り手市場」です。 しかし、その波に誰もが乗れるわけではありません。企業が本当に求めているのは、変化に対応できる専門性を持った人材です。 この記事では、10年以上にわたり経理の転職市場を見てきたプロの視点から「経理の売り手市場」について解説します。

経理の転職は本当に売り手市場?現場のリアルと真実

「最近、経理は売り手市場だとよく聞くけど、本当なのかな?」 「自分の経理経験は、今の転職市場でどれくらい評価されるんだろう?」

もしあなたが経理としてのキャリアに、このような疑問や期待をお持ちなら、今がまさにチャンスの時期かもしれません。結論からお伝えすると、専門性の高いスキルを持つ経理人材にとって、現在の転職市場は間違いなく「売り手市場」です。

しかし、ただ「経理」というだけで誰もが有利に転職できるわけではありません。なぜ売り手市場と言われるのか、その背景にある現場のリアルな採用動向と、企業が本当に求めている人材像について、詳しく解説していきます。

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「売り手市場」って聞くけど、本当のところはどうなの?

統計の表面だけでは見えない、売り手市場と言えるワケ

転職市場に関する一般的な統計データには、未経験からでも応募可能な一般的な事務職から、高度な専門知識が求められる経理・財務のプロフェッショナルまで、幅広い職種が含まれています。そのため、表面的な数字だけを見ると、「求職者よりも求人の数が少ない」と感じるかもしれません。

しかし、この数字には注意が必要です。現場の感覚からお伝えすると、多くの企業が抱える課題は、「定型的な事務スキルを求める求人」と「高度な専門性を持つ求職者」との間にあるミスマッチです。企業は、単純な伝票処理やルーティンワークを担う人材よりも、会社の経営基盤を支え、変革をリードできる人材を強く求めています。

専門的なスキルを持つ経理経験者に限定すれば、その求人倍率は非常に高く、企業側が優秀な人材の獲得に苦戦しているのが実情です。つまり、経験やスキルを持つあなたにとっては、多くの企業から必要とされる「売り手市場」と言えるのです。

数字の表面だけでは見えない実態があるんですね!
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企業が奪い合う「専門スキルを持つ経理人材」の実態

では、企業は具体的にどのような「専門スキルを持つ経理人材」を求めているのでしょうか。特に上場準備企業や成長フェーズにある企業では、事業の根幹を支える経理部門の強化が急務となっており、以下のような経験を持つ人材の獲得競争が激化しています。

特に需要の高いスキル・経験 企業が求める理由
年次決算の主担当経験 会社の1年間の成績を正確にまとめる、経理の根幹スキルとして高く評価されるため
上場企業での開示業務経験 厳しいルールに則った情報開示の実務経験は、企業の信頼性を担保する上で不可欠なため
IPO(株式上場)準備経験 企業の成長戦略に直結する専門知識であり、経験者が非常に少ないため
会計士・税理士などの資格 専門知識の客観的な証明となり、税務や監査対応で即戦力となるため

これらの経験を持つ人材は、単なる「作業者」ではなく、会社の未来を共に創るパートナーとして、非常に高い価値を見出されています。そのため、企業は魅力的な役職や待遇を提示してでも、獲得したいと考えているのです。

【転職事例】売り手市場を象徴する30代経理の成功例

「売り手市場」という状況を最大限に活かし、キャリアアップを実現された方の事例をご紹介します。これは、現在の市場がいかに経理経験者にとって追い風であるかを示す、象徴的なケースです。

ある30代半ばのAさんは、上場企業で約7年間、年次決算の主担当や開示業務などを経験されていました。自身の市場価値を知りたいと転職活動を開始したところ、その専門性が高く評価され、驚くべき結果につながります。

活動を開始して、わずか1ヶ月半の間に、なんとIPO準備中のベンチャーから安定した上場企業まで、合計5社から内定を獲得。各社とも即戦力のマネージャー候補としてAさんを評価し、選考は異例のスピードで進みました。

最終的にAさんは、最も高い評価と「管理部門マネージャー候補」という役職を提示した上場準備企業への入社を決断。年収アップはもちろんのこと、キャリアの幅を大きく広げる転職を成功させました。

この事例からわかるのは、企業が確かな実務経験を持つ経理人材を、いかに求めているかという事実です。これはまさに、求職者が多くの選択肢の中から、自身のキャリアプランに最も合う企業を「選べる」という、売り手市場ならではの状況と言えるでしょう。

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自分の経験でも、こんなチャンスがあるかもしれないんだ!

なぜ今、経理は売り手市場なのか?背景にある3つの構造変化

専門スキルを持つ経理人材にとって、なぜ今がこれほどの「売り手市場」なのでしょうか。その理由は、単に景気が良いからといった一時的なものではありません。実は、日本企業全体が直面している、より大きな3つの「構造変化」が背景にあります。

この変化の波を理解することで、あなたが次に目指すべきキャリアの方向性や、身につけるべきスキルがより明確になるはずです。

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売り手市場の理由って、社会の変化も関係してるんだ!

変化1:DX化の波とシステムに強い経理の需要拡大

一つ目の大きな変化は、DX(デジタルトランスフォーメーション)の波です。ペーパーレス化や業務効率化は、今やあらゆる企業にとって重要な経営課題。特に経理部門では、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応も重なり、新しい会計システムの導入や業務プロセスの見直しが急務となっています。

しかし、長年慣れ親しんだやり方を変えることに、現場が戸惑うケースは少なくありません。そこで、新しいITツールを使いこなすだけでなく、その導入をリードできる「システムに強い経理」の価値が急速に高まっているのです。

単にシステムを操作できるだけではありません。企業が本当に求めているのは、「なぜこのシステムが必要なのか」「導入によって業務はどう改善されるのか」を経営層や他部署に説明し、プロジェクトを円滑に進めることができる人材です。あなたのITスキルや知識は、もはや経理の付加価値ではなく、中心的な能力として評価される時代になっています。

変化2:IPOや事業拡大で求められる「攻めと守りの経理」

二つ目の変化は、企業の成長戦略が多様化する中で、経理に求められる役割が大きく広がっていることです。

これまでの経理は、正確な月次・年次決算や税務申告といった、会社の基盤を固める「守りの経理」が主な役割でした。もちろん、この重要性は今も昔も変わりません。しかし、IPO(株式上場)を目指したり、M&Aや新規事業投資を積極的に行ったりする企業が増える中で、新たな役割が期待されるようになっています。

それが、財務的な視点から経営戦略に関与する「攻めの経理」です。

役割 具体的な業務内容
守りの経理 (従来型) 月次・年次決算、税務申告、監査対応、伝票処理など、正確な会計処理を行う
攻めの経理 (新需要) 資金調達、M&Aの検討、予算策定と予実管理、経営分析資料の作成、資本政策の立案など

特に成長ベンチャーなどでは、経営者と同じ目線で事業計画を考え、資金調達や投資判断をリードできる人材が強く求められています。もちろん、東海地区に多い安定した老舗企業などでは、引き続き「守りの経理」の正確性が重視される傾向もあります。

大切なのは、「守り」の確かな実務力を土台としながら、企業のフェーズに合わせて「攻め」の視点も持てること。この両方のバランス感覚を持つ人材が、これからの時代をリードしていくのです。

経理の仕事って、守りだけじゃないんですね!
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変化3:ベテランの引退と経理部門の後継者問題

三つ目の変化は、日本の社会構造とも深く関わる「世代交代」の問題です。多くの企業で、長年にわたり経理部門をたった一人で、あるいは少人数で支えてきたベテラン社員が、次々と定年退職の時期を迎えています。

経理業務は専門性が高く、会社独自のルールや判断基準が「属人化」しやすい特徴があります。そのため、ベテランの引退は、単なる人員の欠員ではなく、会社にとって重要なノウハウや経験知が失われる危機に直結します。

この「後継者問題」は非常に深刻で、多くの経営者が頭を悩ませています。だからこそ、企業は次世代の経理部門を担う中核人材の採用に、これまで以上に力を入れているのです。

企業が探しているのは、単に前任者の業務を引き継ぐだけの人材ではありません。これを機に業務プロセス全体を見直し、DX化を推進したり、新しい管理体制を構築したりできる、変革のリーダーとしての役割が期待されています。プレッシャーを感じるかもしれませんが、それは裏を返せば、あなたの手で会社の未来を創り、大きな評価とやりがいを得られる絶好のチャンスでもあるのです。

経理の売り手市場で転職を成功させる3つの戦略

経理が売り手市場であるという事実と、その背景にある構造変化についてご理解いただけたでしょうか。この追い風は、あなたのキャリアにとって間違いなく大きなチャンスです。

しかし、ただ待っているだけでは、理想の未来は手に入りません。このチャンスを最大限に活かし、転職を成功させるためには、正しい知識に基づいた「戦略」が不可欠です。

ここでは、数多くの経理人材の転職を支援してきた経験から、売り手市場で成功を掴むための具体的な3つの戦略をお伝えします。

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チャンスを活かすために、具体的に何をすればいいの?

戦略1:売り手市場で評価される「市場価値の高い専門スキル」とは

最初の戦略は、現在の転職市場でどのようなスキルが高く評価されるのかを正確に理解し、ご自身の経験と照らし合わせることです。まずはご自身のこれまでのキャリアを振り返り、「経験の棚卸し」をしてみましょう。

特に、以下の表にあるような経験は、多くの企業が求めている「市場価値の高い専門スキル」と言えます。ご自身の経歴に当てはまるものがないか、ぜひ確認してみてください。

市場価値の高い経験・スキル なぜ今、特に評価されるのか?
年次決算の主担当経験 会社の1年間の財務状況をまとめる根幹業務であり、経理としての基礎体力を証明する最も重要な経験だからです
連結決算・開示業務 上場企業やそのグループ会社で必須となる高度なスキルであり、対応できる人材が限られているため、希少価値が高まります
IPO準備・M&A関連業務 会社の成長戦略に直接関わる経験は非常に貴重です。特にIPO準備は、内部統制や資本政策など幅広い知識が求められます
管理会計・予算管理 過去の数字をまとめるだけでなく、未来の経営判断に貢献する「攻めの経理」としてのスキルは、成長企業で特に重宝されます

これらの経験は、単に「できる」だけでなく、「どのような立場で、どのように貢献したか」を具体的に語れることが重要です。自分の強みを正しく認識することが、成功への第一歩となります。

経理に求められる能力とは?市場価値を高める専門スキルとキャリアパス

戦略2:実務能力+αで差がつく!企業が本当に求める人物像

専門スキルが重要であることは間違いありません。しかし、多くの候補者の中から「あなたにぜひ来てほしい」と思わせるためには、スキルに加えた「+αの資質」が決定打となることがよくあります。

売り手市場だからこそ、企業は採用のハードルを下げているわけではなく、むしろ将来の会社を担うコアメンバーとして、より多角的に候補者を評価しています。特に、以下の3つの視点は、多くの経営者や採用担当者が共通して重視するポイントです。

経営目線 単に数字を処理するだけでなく、「この数字が会社の利益や成長にどう影響するのか」を考え、経営者と同じ視点で財務状況を語れる力。

調整力・巻き込み力 経理は、社内の他部署や、監査法人・金融機関といった社外の専門家など、多くの人と関わる仕事です。それぞれの立場を理解し、利害を調整しながら物事を前に進めるコミュニケーション能力。

プレイングマネージャー志向 特に成長企業や中小企業では、マネージャーであっても部下に指示を出すだけでなく、自らも手を動かして現場の実務を回す姿勢が強く求められます。「現場を理解している」という信頼感が、組織を動かす力になります。

これらの資質は、すぐに身につくものではありません。しかし、日々の業務の中で意識するだけでも、あなたの仕事への取り組み方は変わり、面接の場で語れるエピソードも深まるはずです。

スキルとスタンス、この両輪があなたの価値を最大化します!
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戦略3:経理の転職に強い専門エージェントの戦略的活用法

最後の戦略は、転職のプロフェッショナルを味方につけることです。売り手市場とはいえ、自分一人での転職活動には限界があります。特に、経理のような専門職の転職では、その分野に特化した転職エージェントを「キャリアパートナー」として戦略的に活用することが成功への近道です。

専門エージェントを活用することで、以下のような自己流の転職活動では得られない大きなメリットがあります。

活用シーン 専門エージェントから得られるメリット
キャリア相談 客観的な視点であなたの強み・弱みを分析し、今後のキャリアプランを一緒に考えてくれます
求人紹介 一般には公開されていない非公開求人や、企業のリアルな内情(社風や課題)まで踏まえた、精度の高いマッチングが期待できます
選考対策 企業ごとに合わせた職務経歴書の添削や面接対策、推薦状による後押しなど、内定獲得率を高めるための具体的なサポートを受けられます

大切なのは、エージェントを単に「求人を紹介してもらう場所」と考えるのではなく、「自分のキャリアの可能性を広げるための相談相手」と捉えることです。「少し将来について考えてみたい」「自分の市場価値が知りたい」といった段階でも、気軽に相談してみることで、思わぬ道が開けるかもしれません。

まとめ:売り手市場の今こそ、あなたのキャリアを考える絶好の機会

ここまで、経理の転職市場がなぜ「売り手市場」なのか、そしてそのチャンスをどう活かすべきかについてお伝えしてきました。

DX化の波、企業の成長戦略の多様化、そして世代交代という大きな構造変化を背景に、専門スキルを持つ経理人材の価値は、かつてないほど高まっています

もしかしたら、あなたは「今の会社に大きな不満はない」「転職はまだ先のこと」と感じているかもしれません。そのお気持ちも、とてもよく分かります。

しかし、このような好機は永遠に続くものではありません。キャリアの選択肢が最も広がり、自分自身の価値を客観的に評価してもらいやすい「売り手市場」の今だからこそ、一度立ち止まってご自身のキャリアをじっくりと見つめ直す絶好の機会なのです。

それは、必ずしも「今すぐ転職する」ことだけを意味するのではありません。

「自分の経験は、市場でどれくらい評価されるのだろう?」 「5年後、10年後、自分はどんな経理のプロフェッショナルになっていたいだろうか?」

まずは、そんな問いを自分自身に投げかけることから始めてみませんか。そして、信頼できるキャリアの専門家に、あなたの想いや現状を話してみるのも良いでしょう。客観的な視点からのアドバイスは、きっとあなたが進むべき道を照らす光となるはずです。

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自分のキャリア、一度ちゃんと考えてみようかな。

この記事が、あなたがご自身の可能性を再発見し、より充実したキャリアを築くための新たな一歩を踏み出す、そのきっかけとなれば、これほど嬉しいことはありません。

経理の転職に関するよくある質問

優秀な経理マンの特徴は?

優秀な経理担当者には、3つの共通点があります。 1つ目は、決算業務などの「確かな実務能力」が土台としてあることです。2つ目は、数字の先にある経営を考える「経営目線」や、社内外の関係者をまとめる「調整力・巻き込み力」といった+αの資質です。そして3つ目は、新しい会計システムや法改正に柔軟に対応できる「変化への対応力」です。これらのスキルをバランス良く備えている方が、市場で高く評価される傾向にあります。
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売り手市場とはどういうことですか?

「売り手市場」とは、求人の数(企業の需要)が求職者の数(人材の供給)を上回っている状態を指します。これにより、労働者側(売り手)が有利な立場で就職・転職活動を進めやすくなります。特に現在の経理市場では、IPO準備やDX化の推進といった専門スキルを持つ人材の需要が非常に高く、求職者が複数の企業から内定を得て、より良い条件やキャリアプランを選べる状況が生まれています。
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経理のつらいことはなんですか?

経理の仕事で「つらい」と感じられる点としては、主に3つが挙げられます。 1つ目は、決算期などの繁忙期に業務が集中し、残業が増えがちなことです。 2つ目は、専門性が高いがゆえに業務が属人化しやすく、一人で責任を抱え込んでしまうプレッシャーです。 3つ目は、法改正や新しい会計基準など、常に新しい知識を学び続けなければならない点です。 しかし、これらの困難を乗り越える経験こそが、あなたの専門性を深め、市場価値をさらに高める糧となります。
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無料キャリア相談実施中

著者
後藤 大輝  
後藤 大輝  
HR事業部シニアマネージャー
株式会社クルー HR事業部 シニアマネージャー。2013年より管理部門・士業分野に特化した人材エージェントとしてキャリアをスタート。10年以上にわたり活躍し、全社MVP受賞やマネージャー職を歴任した。現在はCFO代行・IPO支援を行う株式会社クルーにてHR事業を統括している。得意とする分野は、上場準備企業を含む成長フェーズの管理部門(経理・財務、人事・総務、法務、経営企画など)のマッチングである。求職者と企業双方を自身が担当する一気通貫サポートが特長。企業の課題や募集背景も包み隠さず共有する誠実な情報提供と、量より質を重視した最適なマッチングを実践している。また、10年超で培った東海地区の知見と人脈を活かし、独自の機会提供も可能としている。
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