経理職のキャリアパスを未経験から考える
未経験から経理職に転職する方法
未経験から経理職を目指す場合、必要なスキルや資格を取得することで転職の可能性が高まります。また、実際の転職成功事例を参考にすることで、効率的な転職活動を進めることができます。ここでは、未経験者向けの転職方法を詳しく解説します。
経理未経験者が知っておくべき基本スキルと資格
未経験から経理職へ転職するには、いくつかの重要なスキルと資格を身につける必要があります。特に以下のスキルは転職時に評価されやすいです。
| スキル | 詳細 |
|---|---|
| 簿記の知識 | 日商簿記2級の取得を推奨。仕訳や決算の知識を身につけられる。 |
| PCスキル | Excelを使ったデータ管理や表計算、関数を活用するスキル。 |
| コミュニケーション能力 | 他部署と連携して業務を進める際に必要なスキル。 |
資格としては、日商簿記2級が最も一般的で、基礎的な会計知識をアピールするために有効です。さらに、FASS検定やExcelのMOS資格を持っていると、実務に役立つスキルを証明できます。
あなたの経験も武器になる!異業種経験を経理で活かす具体例
「自分には経理に関連する経験なんて何もない…」と不安に思う必要は全くありません。実は、どんな職種の経験であっても、視点を変えれば経理業務で大いに活かせる強みが隠されています。ここでは、代表的な前職別に、あなたの経験がどう経理の仕事で役立つかを具体的に見ていきましょう。
| 前職 | 経理で活かせるスキル・経験 | 具体的な活躍シーン |
|---|---|---|
| 営業職 | ・数字への意識 ・予算管理能力 ・コミュニケーション力 |
・売上データの分析や予実管理がスムーズに行える ・営業部門との経費精算のやり取りで、現場目線の円滑な対応ができる ・売上急増の背景(キャンペーン等)を推測し、報告に付加価値をつけられる |
| 販売職 | ・数値を正確に扱う丁寧さ ・在庫管理経験 ・顧客対応力 |
・日々の売上管理(レジ締め等)の経験が、仕訳入力の正確性に直結する ・在庫管理の知識が、棚卸資産の評価や実地棚卸業務で活きる ・店舗からの経理に関する問い合わせに、丁寧かつ分かりやすく対応できる |
| 人事・総務 | ・労務管理の知識 ・社内調整力 ・コンプライアンス意識 |
・給与計算や社会保険手続きの知識が、経理業務とスムーズに連携できる ・社内規程の知識が、経費精算ルールの適切な運用に活きる ・複数部署との調整経験が、経理のハブ機能として大いに役立つ |
| SE・エンジニア | ・論理的思考力 ・ITスキル ・システム理解力 |
・会計ソフトやRPAツールの導入・活用を主導できる ・既存の業務フローを分析し、効率化の提案ができる ・経理部門のIT化推進リーダーとして、将来的に活躍できる |
【面接でのアピール例】
面接では、これらの経験を以下のように「経理の視点」で語ることが重要です。
このように、前職での経験を「経理の言葉」に翻訳して語ることで、たとえ未経験であっても、採用担当者にあなたのポテンシャルと貢献イメージを強く印象付けることができます。
未経験から経理に転職した場合の収入目安
未経験からの転職で最も気になるのが「収入面」ではないでしょうか。「専門職だから給料が高そう」という期待と、「未経験だと下がってしまうのでは」という不安があると思います。経理職は専門性が高いため、他の事務職と比べて収入水準は高めの傾向にあります。
以下に、派遣社員の場合の時給と、正社員の場合の年収目安をデータでご紹介します。
【派遣・パート】職種別・経験年数別 平均時給の比較
まず、派遣やパートで働く場合の時給を見てみましょう。経理事務は、未経験でも他の事務職より高い時給が期待でき、経験を積むことで着実に昇給していきます。
| 職種・経験 | 平均時給(目安) |
|---|---|
| 一般事務 | 1,400円 |
| 営業事務 | 1,450円 |
| 経理事務(未経験) | 1,550円 |
| 経理事務(経験1~3年) | 1,700円 |
| 経理事務(経験3年以上) | 1,900円~ |
【正社員】経験年数別 年収推移の目安
正社員の場合、経験年数に応じて責任範囲が広がり、それに伴って年収も段階的に上昇していきます。
| 経験年数 | 年収目安 | 想定されるポジション |
|---|---|---|
| 未経験1年目 | 300万円~350万円 | 経理アシスタント |
| 3年目 | 350万円~450万円 | 経理担当(月次決算など) |
| 5年目 | 400万円~550万円 | 経理主任(年次決算など) |
| 10年目以降 | 500万円~700万円 | 経理課長・マネージャー |
このように、経理職は経験を積むことで着実に収入が上がる、再現性の高いキャリアを築けるのが大きな魅力です。さらに、英語力を身につけて外資系企業を目指したり、税理士や公認会計士といった難関資格を取得して専門性を高めたりすることで、年収1,000万円以上を目指す道も開かれています。
実際の転職成功事例から学ぶポイント
「理論は分かったけど、実際に転職した人はどんな人なんだろう?」そんな疑問にお答えするため、私たちが実際にサポートさせていただいた、未経験から経理への転職を成功させた方々のリアルな事例をご紹介します。ぜひ、ご自身に近いケースを参考に、成功へのヒントを見つけてください。
【事例1:20代後半・女性・営業職 → 経理職】
- 前職:IT企業の営業(5年)
- 取得資格:日商簿記2級
- 成功のポイント:
営業時代の予算管理経験と数字への強い意識をアピール。「売上データ分析の経験を、今後は会社全体の財務分析に活かしたい」という、前職の経験と将来のビジョンを繋げた明確な志望動機が高く評価されました。 - 現在:
成長中のベンチャー企業の経理スタッフとして、月次決算を担当。入社1年で年次決算の補助にも抜擢されるなど、早期に戦力として活躍しています。
【事例2:30代前半・男性・SE → 経理職】
- 前職:SIerのシステムエンジニア(7年)
- 取得資格:日商簿記2級、MOS(Excel Expert)
- 成功のポイント:
自身のITスキルを最大の武器として、「経理業務のIT化・効率化を推進したい」という具体的なキャリアビジョンを提示。面接では、会計システムの導入プロジェクトにどう貢献できるかをロジカルに説明し、他候補との差別化に成功しました。 - 現在:
中堅メーカーの経理部で、RPAツールの導入プロジェクトを主導。まさに「ITに強い経理」として、社内で独自のポジションを確立しています。
【事例3:40代・女性・販売職 → 経理職】
- 前職:アパレル販売員(15年)
- 取得資格:日商簿記2級(1年かけて取得)
- 成功のポイント:
年齢的なハンデを克服するため、まず派遣社員として経理の実務経験を1年間積むという戦略的なステップを踏みました。派遣先での真面目な仕事ぶりと、販売で培った「丁寧な顧客対応力」が評価され、正社員登用のオファーを勝ち取りました。 - 現在:
アパレル企業の経理部で、全国の店舗からの経費精算対応などを担当。「店舗スタッフの気持ちが分かる」という強みを発揮し、現場と管理部門の橋渡し役として活躍中です。
【共通する成功のポイント】
これらの事例から、未経験からの転職を成功させるためには、以下の4つのポイントが共通して重要であることがわかります。
- 日商簿記2級を取得していること(学習意欲と基礎知識の証明)
- 前職の経験を経理の仕事にどう活かすかを具体的に語れること(ポータブルスキルのアピール)
- 「入社後、どうなりたいか」という明確なキャリアビジョンを持っていること(将来性のアピール)
- 転職エージェントや派遣制度をうまく活用し、戦略的に活動していること(情報戦を制する)
未経験でも経理職へ転職できる求人の探し方
未経験者でも応募可能な経理求人を見つけるには、いくつかのポイントを押さえることが大切です。
– 転職エージェントを活用:経理に特化した転職エージェントを利用することで、未経験者向けの求人を効率よく探せます。
– 求人サイトで検索:求人サイトで「未経験歓迎」「経理職」といったキーワードを使い、応募条件に合う求人を見つけましょう。
– 中小企業やベンチャー企業を狙う:未経験者を積極的に採用する企業が多く、ポテンシャル採用のチャンスがあります。
求人を探す際には、自分の希望条件を明確にし、転職エージェントや求人サイトをうまく活用しましょう。効率的に情報収集を行うことで、希望に合った求人に出会える可能性が高まります。
経理未経験者のキャリアパスを考える
未経験から経理職に就いた後、長期的なキャリアを築くためには明確な目標設定が重要です。特に1年目から10年目にかけて、段階的に成長するための具体的な計画を立てましょう。ここでは、1年目、5年目、10年目以降に達成すべき目標を紹介します。
1年目の目標:基礎業務を確実に習得する
経理職に就いて最初の1年は、基礎的な業務を正確に行うことが大切です。この期間に以下の業務を習得しましょう。
– 仕訳の正確な処理:経理業務の基本である仕訳を正確に行う
– 月次決算業務のサポート:決算の流れを理解し、補助業務を担当
– 領収書や請求書の管理:ミスなく効率的に処理する
1年目は基礎を固める時期であり、正確さを重視して業務に取り組むことで次のステップに進む準備が整います。
3~5年目の目標:担当業務の幅を広げ、チームリーダーを目指す
経理職3年目以降は、基礎業務を確実にこなせるようになった上で、より高度な専門業務や後輩の育成にも携わる、キャリアの重要な過渡期です。この時期の具体的な成長ステップを見ていきましょう。
【3年目】月次決算を独り立ちし、年次決算を経験する
- 月次決算を一人で完結できるようになる。
- 初めて年次決算の主要な工程を経験し、1年間の業務の流れを完全に理解する。
- (未取得の場合)キャリアの土台となる日商簿記2級を取得する。
- 新しく入ってきた後輩に対し、日次業務の簡単な指導を開始する。
【4年目】年次決算の主担当となり、業務改善にも着手する
- 年次決算で特定の担当領域を持ち、主体的に業務を進められるようになる。
- 法人税や消費税などの税務申告書の作成補助に携わる。
- 「この作業はもっと効率化できるのでは?」と考え、経理システムの改善提案や業務フローの見直しに取り組む。
- 他部署との連携を強化し、経費精算に関する問い合わせ対応などをスムーズに行う。
【5年目】チームリーダーとして、管理会計の領域へ
- 2~3名の後輩をまとめるチームリーダーとしての役割を担う。
- 月次・年次決算全体のスケジュール管理や、発生した問題の解決を主導する。
- 経営陣への報告資料作成に、より深く関与する。
- 過去の数字をまとめる「財務会計」だけでなく、未来の数字を作る「管理会計(予算管理、予実分析など)」の知識を本格的に習得し始める。
この時期に身につけるべき最も重要なスキルは、リーダーシップと、社内外の関係者を巻き込むコミュニケーション能力です。単に自分の業務を完璧にこなすだけでなく、チーム全体の生産性をどう高めるかという視点を持つことが、次のステップである「経理主任」や「課長」への道を開きます。
10年目以降の目標:経営に関わるポジションを視野に入れる
将来的には、経理業務を超えて経営に関わる役割を担うことを目指しましょう。この段階では以下のような業務に挑戦します。
– 財務戦略の立案:企業の資金繰りや投資戦略に関与する
– 内部統制の整備:コンプライアンスを確保し、企業の信頼性向上に貢献
– 管理職やCFOを目指す:経営層の一員として、経営判断に関与する
10年目以降は経営に直結する役割を担う重要な時期です。これまでの経験を活かし、企業の成長に貢献することを目指しましょう。
面接で「キャリアプラン」を聞かれたときの答え方
経理職の面接、特に未経験者の採用では、高い確率で「5年後、10年後のキャリアプランを教えてください」と質問されます。これは、あなたの成長意欲、計画性、そして会社に長く貢献してくれる人材かどうかを見極めるための重要な質問です。ここで、具体的で前向きな回答ができるかどうかが、合否を大きく左右します。
【回答例1】ITスキルを活かし、業務効率化に貢献したい場合
【回答例2】経理のプロフェッショナルとして経営を支えたい場合
面接官に響く4つのポイント
上記の回答例からも分かるように、面接官に好印象を与えるキャリアプランには、以下の4つの要素が含まれています。
- 具体性:「1年後」「3年後」「5年後」といった具体的な年数と、その時点での達成目標が明確であること。
- 貢献意欲:自分の成長だけでなく、そのスキルを活かして「会社にどう貢献したいか」が示されていること。
- 自己成長意欲:資格取得など、入社後も学び続ける前向きな姿勢が伝わること。
- 現実性:あまりに壮大すぎず、その会社で実現可能な、地に足のついたプランであること。
これらのポイントを意識し、あなた自身の言葉で、経理としての未来像を熱意をもって語りましょう。
未経験者向け経理職のキャリアパス
経理職は企業の規模や業種によって求められる役割が異なるため、未経験から経理職をスタートする際には、自分に合ったキャリアパスを意識することが大切です。また、資格取得や実務経験を積むことで、長期的なキャリア形成を図ることが可能です。ここでは、中小企業・大企業別のキャリアパスや効果的なキャリア戦略について解説します。
中小企業・大企業別のキャリアパス
中小企業と大企業では、経理職における業務範囲や成長の仕方が異なります。それぞれのキャリアパスを理解し、自分に合った進路を選びましょう。
– 中小企業のキャリアパス
中小企業では、幅広い業務を担当するため、オールラウンドなスキルを習得できます。最初は仕訳や月次決算といった基本業務を行いながら、資金繰りや経営分析などの業務にも携われるため、短期間で多様なスキルを身につけることが可能です。将来的には、財務や経営企画部門へのキャリアチェンジも視野に入ります。
– 大企業のキャリアパス
大企業では、分業制が進んでいるため特定の業務に特化しやすい環境です。高度な専門性を磨き、チームリーダーやマネージャーとしての役割を担うことを目指します。また、大企業で培った経験を基に、外資系企業やコンサルティング業界に転職する道も開かれています。
資格取得と実務経験を積み重ねるキャリア戦略
未経験から経理職で成長するためには、資格取得と実務経験を並行して進めることが重要です。以下の戦略を参考にしながらキャリアを積み上げましょう。
経理の資格はこれがおすすめ【転職・年収アップに役立つ資格を厳選】
– 資格取得を計画的に行う
日商簿記2級の取得を最優先にし、会計や税務の基礎知識を証明します。さらに、FASS検定やUSCPA(米国公認会計士)など上位資格を目指すことで、キャリアアップの選択肢を増やせます。
– 実務経験を通じてスキルを向上させる
最初は基礎的な業務を担当しながら、徐々に月次・年次決算や資金繰りの管理といった高度な業務に挑戦しましょう。これにより、実務を通じてスキルを高められます。
– 研修やセミナーに積極的に参加する
業務外で最新の会計知識や税務情報を学ぶために、定期的な研修やセミナーに参加することも効果的です。
経理のキャリアパスでよくある例
【トレンド】ITスキルを武器に、業務改革を推進するキャリアパス
近年、経理のキャリアパスとして最も注目されているのが、会計知識とITスキルを掛け合わせた「ITに強い経理」です。会計ソフトの進化はもちろん、RPA(Robotic Process Automation)による定型業務の自動化や、AIを活用したデータ分析など、経理業務は急速にIT化が進んでいます。この変化に対応できる人材は、企業から喉から手が出るほど求められています。
【短期目標:1〜3年】基礎業務の習得とITスキルの土台作り
- 経理の基礎業務(仕訳入力、月次決算補助など)を確実に習得する。
- ExcelのVLOOKUP関数、ピボットテーブル、マクロなどの高度な機能をマスターする。
- 自社で利用している会計ソフト(freee、マネーフォワードなど)の操作に習熟する。
- クラウド、API連携、情報セキュリティといったITの基礎知識を学ぶ。
【中期目標:3〜10年】業務効率化の主担当へ
- 経理業務の非効率な部分を見つけ出し、具体的な改善提案を主導する。
- RPAツールの導入や、経費精算システムなどの新規システム選定・導入プロジェクトに参画する。
- 外部のITベンダーやコンサルタントと対等に渡り合い、折衝を進める。
【長期目標:10年〜】経理部門のDXを牽引するリーダーへ
- 経理部門全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を計画・推進する。
- AIやIoTといった最新技術を経理業務にどう活用できるかを検討し、経営陣に提案する。
- 経理部長やCFOとして、財務とITの両面から企業成長を支える戦略的な意思決定を行う。
経理主任やCFOなどの上級職へのキャリアアップ
経理の経験を積み、主任や課長、さらにはCFOといった上級職に昇進することで、企業経営の中心に近い立場で活躍できます。これには、決算業務や財務管理の専門知識が必要です。
経営企画や役員として経営層で活躍
経理の知識を活かし、経営企画部門や役員として企業戦略の立案や意思決定に関与するキャリアも可能です。これは、経理業務の枠を超えた視野が求められるステップです。
中小企業から大手企業の経理ポジションへのステップアップ
中小企業で幅広い経理業務を経験し、そのスキルを活かして大手企業の経理ポジションに転職するキャリアパスもあります。専門性を磨きながら、さらに高度な業務に挑戦できます。
外資系や海外拠点の経理職に挑戦
英語力を磨き、外資系企業や海外拠点の経理職に挑戦することで、国際的なキャリアを築くことも可能です。この場合、USCPAなどの国際資格が有利になります。
上位資格を活かして士業として独立・開業
経理職として経験を積んだ後、税理士や公認会計士の資格を活かして独立・開業する道もあります。これにより、顧客に直接サービスを提供し、自身のビジネスを展開できます。
よくある質問
