経理は簿記を持ってないとダメ?【転職のプロが解説】
経理に挑戦したい。でも簿記は本当に必要?3級と2級はどちらから?未経験でも採用で評価される?——そんな「経理 × 簿記」の疑問に、最短ルートで答える記事です。
本稿では、簿記の各級で評価されるポイントと勉強時間の目安、未経験でも伝わる面接アピール例、実務での活かしどころ(仕訳・月次決算・税務対応)をコンパクトに整理。業界別(建設・製造・サービス)の注意点もカバーします。
さらに+αで、簿記を起点に「経理担当 → リーダー → マネージャー → CFO」へ進むシンプルなキャリアイメージも提示。
読み終えるころには、「今日から何をやるか(3級→2級→月次の一部を任せてもらう)」が明確になります。さっそく本文へどうぞ。
経理は簿記資格を持っていないとまずい?
結論から言うと、経理の仕事に簿記資格は必ずしも必須ではありません。しかし、特に未経験から転職を目指す場合、資格の有無が採用の可否や待遇を大きく左右するのが実情です。実際に、一部の転職支援サービスでは、未経験者が日商簿記2級以上を保有していると、資格がない応募者に比べて書類選考の通過率が約2倍に向上するというデータも報告されています。さらに、資格は会計知識の客観的な証明となるため、年収交渉の場面で有利に働くことも少なくありません。「持っていないとまずい」というよりは、「持っているとキャリアの選択肢と交渉力が格段に上がる」と考えるのが適切でしょう。

簿記資格が経理キャリアに与える影響
簿記資格を持つことで、採用担当者や経理部の上司からの評価が高くなります。なぜなら、簿記資格は経理業務の基本的な知識を証明するものだからです。特に日商簿記3級以上を取得していると、「基礎力がある」と見なされるため、未経験者でも経理職に挑戦しやすくなります。
経理で活かせる簿記のスキル
簿記のスキルは、企業の経済活動を記録・計算・整理するための共通言語であり、経理業務の根幹をなすものです。資格のレベルに応じて、担当できる業務の範囲や専門性が大きく変わります。ここでは、日商簿記検定の各級でどのような実務スキルが身につき、どのような業務に対応できるようになるかを具体的に解説します。
- 簿記3級:日常業務をこなすための基礎知識
小規模な株式会社の経理担当者を想定したレベルで、経理の入り口となる知識です。この級を取得すると、伝票の起票や仕訳入力、経費精算、売掛金・買掛金の管理といった、日々の基本的な経理補助業務を正確にこなすことができるようになります。 - 簿記2級:企業の決算業務を担う実践的知識
商業簿記に加え、メーカーなどで必須となる工業簿記(原価計算)を学びます。中小企業の経理担当者として十分な知識レベルであり、月次・年次決算業務を担当し、貸借対照表や損益計算書といった財務諸表を作成するスキルが身につきます。多くの企業が未経験者採用の応募条件として「簿記2級以上」を掲げています。 - 簿記1級:経営分析に関わる高度な専門知識
会計基準や会社法、財務諸表規則など、法律・法規への深い理解が求められる非常に専門性の高いレベルです。子会社を持つ企業の連結決算や、財務諸表を分析して経営戦略を提言する業務、予算策定など、経理・財務部門のスペシャリストや管理職として活躍するための知識が習得できます。

経理職と簿記資格の関係性
簿記資格を持つことは、経理職への第一歩です。ただし、企業の中には資格以上に実務経験を重視するところもあります。そのため、資格取得後には実務を通じてスキルを磨き、専門性を高めることが重要です。また、建設業や製造業など、特定の業界では簿記資格が必須条件となる場合もあります。
| 業界 | 簿記資格の必要性 |
|---|---|
| 建設業 | 建設業経理士の取得が推奨 |
| 製造業 | 原価計算の理解が求められる |
| サービス業 | 基本的な簿記スキルで対応可能 |
経理職で簿記資格を取得するメリット
経理職でのキャリアアップを目指すなら、簿記資格の取得は大きなアドバンテージになります。以下では、簿記資格が転職や就職、さらにはキャリア形成にどのように貢献するのかを具体的に解説します。

転職・就職でのアピールポイント
簿記資格は、経理職を目指す方にとって履歴書に書ける代表的な強みです。特に日商簿記2級以上を持っていると「会計の基礎知識を体系的に習得している」と客観的に評価され、書類選考の通過率を高める大きな武器になります。
しかし、重要なのは面接の場です。採用担当者は、資格を持っているという事実以上に、「なぜ簿記を学んだのか」「それを自社でどう活かしてくれるのか」という、あなたのポテンシャルと熱意を知りたがっています。

未経験者だからこそ効果的なのが、「これまでの職務経験 × 簿記の知識」という掛け算で自己PRを構成することです。これにより、単なる知識だけでなく、その知識を活かして貢献できる具体的なイメージを採用担当者に示すことができます。以下に自己PRの例文を紹介します。
- 営業職の経験を活かす場合:
「前職の営業では売上や利益率を常に意識していましたが、簿記2級を学習し、売上原価や販管費の構造を体系的に理解できました。この経験を活かし、数字の裏側にある企業の活動を理解した上で、正確な経理業務に貢献したいと考えています。」 - 販売職の経験を活かす場合:
「販売職として在庫管理を担当しており、簿記を学んだことで棚卸資産の重要性を会計面から理解できました。現場で培った商品知識と数字の感覚を、貴社の正確な原価計算や在庫管理業務に活かせると考えております。」 - 事務職の経験を活かす場合:
「一般事務として請求書の処理やデータ入力の正確性を追求してきました。簿記の学習を通じて、一つ一つの取引を仕訳というルールに則って記録する重要性を学びました。前職で培った丁寧な業務遂行能力を、貴社の信頼性の高い月次決算業務に活かしたいです。」

このように、「資格を持っている」という事実に加え、「これまでの経験と簿記学習を通じて何に気づき、今後どう貢献したいか」を具体的に語ることで、採用担当者に「この人なら意欲的に学び、会社に貢献してくれそうだ」という強い期待感を抱かせることができます。
簿記資格が広げるキャリアの可能性
簿記資格を取得することで、キャリアの選択肢が広がります。未経験であっても、日商簿記2級を取得していることで応募可能な求人が増えます。また、実務経験を積みながら資格を取得することで、より専門的な職種にも挑戦できるようになります。

初心者が始めやすい理由
簿記資格は、会計の基礎を学べるため初心者にも始めやすい資格です。特に日商簿記3級は、全くの未経験者でも短期間で合格を目指せる難易度となっており、経理や会計の基本を理解するのに最適です。また、勉強を進める中で実務に必要なスキルも自然と身につき、転職活動時に強力な武器となります。
| 簿記資格 | 勉強期間の目安 |
|---|---|
| 日商簿記3級 | 1~2ヶ月 |
| 日商簿記2級 | 3~6ヶ月 |
| 日商簿記1級 | 1年以上 |
簿記を持っていない方へおすすめの資格
簿記資格を取得しようと考える初心者にとって、どの資格が適しているのかは重要なポイントです。以下では、日商簿記を中心に他の簿記資格との違いや勉強法、試験内容について詳しく解説します。

日商簿記と他資格の違い
日商簿記は簿記資格の中で最も知名度が高く、企業からの信頼も厚い資格です。一方、全経簿記や全商簿記などの資格は、特定の業界や教育機関での活用が主で、日商簿記と比較すると全国的な認知度はやや低めです。しかし、それぞれの資格には特徴があり、目的やニーズに応じた選択が求められます。
簿記以外で有効な経理の資格は何?キャリアアップに役立つおすすめ資格と取得方法
初心者向けの簿記勉強法
簿記の勉強を始める際は、基礎的な知識を学べる教材やオンライン講座を活用することがおすすめです。特に日商簿記3級は、仕訳の基礎や貸借対照表、損益計算書の基本を学ぶことから始めます。また、過去問題や模擬試験を解くことで出題傾向を理解し、合格に近づけます。

簿記試験の難易度と内容比較
簿記試験は、取得を目指す級によって難易度が大きく異なります。日商簿記3級は初心者向けで短期間の勉強でも対応可能ですが、2級以上になると商業簿記や工業簿記といった高度な知識が求められます。そのため、3級から順に学び、段階的にスキルを積み上げることが大切です。
| 級 | 難易度 | 勉強期間の目安 |
|---|---|---|
| 日商簿記3級 | 初心者向け、基本的な内容 | 1~2ヶ月 |
| 日商簿記2級 | 中級、商業簿記と工業簿記 | 3~6ヶ月 |
| 日商簿記1級 | 上級、財務諸表分析まで網羅 | 1年以上 |
補足:簿記検定の詳細
簿記資格には、主に「日商簿記」「全経簿記」「全商簿記」の3種類があります。それぞれの資格には主催団体や試験の難易度、特徴に違いがあり、目的や状況に応じて選ぶことが重要です。
日商簿記
- 主催団体:日本商工会議所
- 資格のレベル:1級~3級
- 合格率:3級:40~50%、2級:15~25%、1級:10%以下
- 必要な勉強時間:3級:50時間、2級:150時間、1級:600時間以上
- 特徴:知名度・信頼性が高く、特に2級以上は実務で役立つため転職市場での評価が非常に高い
- こんな人におすすめ:幅広い業界・企業で活躍したい人、転職・就職で有利な資格を取りたい人
全経簿記
- 主催団体:全国経理教育協会
- 資格のレベル:上級・1級~3級
- 合格率:3級:50%前後、2級:30~40%、上級:10~20%
- 必要な勉強時間:3級:40~50時間、2級:100~150時間、上級:500時間以上
- 特徴:CBT試験を採用しており受験しやすいが、転職市場での評価は日商簿記に比べやや劣る
- こんな人におすすめ:税理士を目指している人、専門学校で学んでいる人、段階的に学習を進めたい人
全商簿記
- 主催団体:全国商業高等学校協会
- 資格のレベル:1級~3級
- 合格率:3級:60~70%、2級:40~50%、1級:30~40%
- 必要な勉強時間:3級:30~40時間、2級:100時間、1級:300時間程度
- 特徴:主に高校生向けで基礎的な簿記知識を身につけるのに適している
- こんな人におすすめ:商業高校に通う学生、基礎から簿記を学びたい初心者
簿記資格を取得した後のキャリア
簿記資格は経理職を目指す方だけでなく、多岐にわたる職種で活用できます。さらに、将来的に経理マネージャーやCFO(最高財務責任者)を目指すうえでも、簿記は最初の一歩となる基礎力です。ここでは、未経験〜経験浅めの方がイメージしやすいキャリアの流れも簡潔に紹介します。
経理職としてのキャリアアップ
簿記で基礎を固め、月次決算を「自分で回せる」ようになるところから始まり、決算の主担当→マネジメント→経営財務へと守備範囲を広げていく流れです。
-
経理担当(簿記3級→2級)
仕訳・売掛/買掛・月次決算補助で土台づくり。まずは「任された勘定や業務を正確に期限内で回せる」状態を目標に。 -
経理リーダー/主任
月次〜年次の主担当となり、締めの早期化や業務フロー改善をリード。小さな改善でも効果を数字で示すのが鍵。 -
経理マネージャー
決算統括、監査・税務対応、予実管理(KPI/レポート)の仕組み化など、チームと仕組みで成果を出す段階へ。 -
CFO候補/CFO
資金繰り・資本政策、予算編成、経営/財務戦略と社内外コミュニケーションを統括。
出発点はシンプルです。「簿記3級→2級の取得」+「月次決算の一部を任せてもらう」。予実会議に同席して数字の見方を学ぶ、資金繰り表に触れるなど、少しずつ守備範囲を広げると次の役割に進みやすくなります。
経理以外で活かせる簿記のスキル
簿記資格は経理職以外にも幅広い分野で役立ちます。たとえば、営業職では取引先の財務状況を分析するスキルとして、また起業を目指す方には経営管理や資金計画の基礎知識として活用できます。また、税務や会計の知識が求められる会計事務所や税理士事務所でもスキルを活かすことができます。
| 職種 | 簿記スキルの活用例 |
|---|---|
| 営業職 | 取引先の財務状況を分析し、提案に活用 |
| 起業家 | 資金計画や経営管理の基礎として活用 |
| 会計事務所 | 日常的な会計処理や税務サポート |
簿記を使った業務の実例
簿記のスキルは、経理業務のあらゆる場面で活用される「設計図」や「ルールブック」のようなものです。日々の取引を記録することから、経営状態をまとめた決算書を作成するまで、すべての業務が簿記のルールに基づいて行われます。この一連の流れを理解すると、簿記の重要性がより明確になります。
簿記(会計ルール)
経理の実務
財務諸表
このように、経理担当者が行う「仕訳入力」や「月次決算」といった実務は、すべて簿keyという土台の上になりたっています。そして、その最終的な成果物が、企業の成績表である「財務諸表」です。簿記を理解していなければ、日々の業務を正しく行うことも、作成された財務諸表の意味を読み解くこともできません。簿記は、経理のプロフェッショナルとして働くための根幹をなすスキルなのです。

簿記資格が転職に有利な理由
簿記資格は転職市場での競争力を高める重要な武器です。特に日商簿記2級以上を取得していると、経理職未経験でも応募可能な求人が増えます。また、資格があることで採用担当者に「基礎知識がある」と判断され、選考において優位に立てるケースが多く見られます。
| 資格 | 転職でのメリット |
|---|---|
| 日商簿記3級 | 経理未経験者が挑戦しやすい |
| 日商簿記2級 | 即戦力として評価される |
| 日商簿記1級以上 | 専門性の高いポジションを目指せる |
よくある質問
