経理未経験はしんどい?これから経理に挑む方へのアドバイス
経理未経験が「しんどい」と感じる6つの理由
未経験から念願の経理職に就いたものの、「想像していたよりしんどい…」と感じてしまう方は少なくありません。しかし、その「しんどさ」の正体を事前に知っておけば、心の準備ができ、乗り越えやすくなります。ここでは、多くの未経験者がつまずきがちな6つの理由と、その対策のヒントをご紹介します。
1. 専門用語の壁|会話が宇宙語に聞こえる
「この伝票、仕訳を切って、減価償却の計算もお願い。あ、繰延資産の残高も確認しといて」
入社初日、先輩たちの会話がまるで外国語のように聞こえるかもしれません。簿記を勉強していても、実務で使われる独特の言い回しや略語に戸惑い、最初は会議の内容を理解するだけでも一苦労です。
2. ミスが許されないプレッシャー|1円の重み
経理の仕事は、1円単位での正確性が求められます。自分の入力ミス一つが、会社の決算数字を狂わせ、税額に影響を与えてしまうかもしれない…というプレッシャーは、他の職種ではなかなか味わえないものです。常に緊張感を持ち続けることに、精神的な疲労を感じる方もいます。
3. 決算期・月次締めの繁忙期|プライベートとの両立
経理の仕事には明確な繁忙期があります。特に、月末月初に行われる「月次決算」や、年に一度の「年次決算」の時期は業務が集中し、残業や休日出勤が発生しやすくなります。「決算が終わるまでプライベートの予定は入れられない」という状況に、しんどさを感じるかもしれません。
4. 覚えるべき業務範囲の広さ|終わりなき学習
経理の仕事は、単なるデータ入力だけではありません。仕訳入力、請求書処理、経費精算、売掛金・買掛金管理、給与計算、税務申告の補助など、業務は多岐にわたります。これらすべてを一人前にこなせるようになるには、少なくとも2〜3年はかかると言われており、覚えることの多さに圧倒されてしまうことがあります。
5. PCスキル(特にExcel)の要求レベルの高さ|ショートカットの嵐
経理業務は、会計ソフトとExcelが両輪です。特にExcelでは、SUMやAVERAGEといった基本的な関数だけでなく、VLOOKUP、ピボットテーブル、マクロといった中級以上のスキルが当たり前のように求められる場面も少なくありません。先輩たちの華麗なショートカットキーさばきについていけず、自分のPCスキルの低さに落ち込んでしまうこともあります。
6. 孤独感・質問しにくい雰囲気|誰に聞けばいい?
経理部門は、他部署に比べて少人数体制であることが多いです。そのため、教えてくれる先輩が一人しかおらず、その先輩が常に忙しそうにしていると、「こんな初歩的なことを聞いていいのだろうか…」と質問するのをためらってしまい、一人で抱え込んでしまうことがあります。この「聞きづらさ」が、精神的な孤独感やしんどさにつながるケースは少なくありません。
経理未経験のしんどさを軽減する対処法
経理の仕事が「しんどい」と感じるのは、経験不足や知識の不安が原因となっていることが多いです。しかし、正しいステップを踏めば、未経験からでも安心して成長していけます。ここでは、特にしんどいと感じやすい「決算期」の乗り越え方から解説します。
最大の山場「決算期」のしんどさを乗り越える準備術
経理にとって1年で最も忙しく、しんどいのが「決算期」です。未経験者が初めての決算を乗り切るためには、その大変さの正体と、事前の準備が何よりも重要になります。
なぜ決算期は「しんどい」のか?
- 通常業務とのダブルパンチ:日次・月次の業務をこなしながら、1年間の数字を確定させるための膨大な追加作業が発生します。
- 特殊業務の集中:税務申告書の作成や、監査法人への資料提出など、普段はやらない専門的な業務がこの時期に集中します。
- スピードと正確性の両立:経営陣への報告資料作成など、タイトなスケジュールの中で、絶対にミスのできない正確性が求められます。
- 極度のプレッシャー:自分のミスが会社全体の数字に影響を与えかねないという、精神的なプレッシャーが通常期とは比較になりません。
未経験者が決算期を乗り切るための4つの事前準備
初めての決算は誰でも不安なものです。しかし、以下の準備をしておくだけで、心身の負担を大きく軽減できます。
- 前年の決算資料に目を通しておく
先輩に許可をもらい、前年の決算スケジュールや作成された資料一式に目を通しておきましょう。「いつ、誰が、何をするのか」という全体の流れを事前に把握しておくだけで、当日の混乱を大幅に防げます。 - 決算1ヶ月前から通常業務を前倒しする
決算期に慌てないよう、請求書の発行や経費精算など、前倒しできる通常業務は1ヶ月前から意識的に片付けておきましょう。この「心のバッファ」が、決算期のあなたを助けます。 - 「決算前の質問タイム」を設けてもらう
決算中は誰もが忙しく、質問しにくい雰囲気になることが予想されます。事前に「決算について、事前に教えていただきたいことがあるので、30分ほどお時間をいただけませんか?」と先輩にお願いし、疑問点をまとめて解消しておきましょう。 - 体調管理を徹底する
繁忙期を乗り切るには、資本である身体が何よりも大切です。決算期が近づいてきたら、意識的に睡眠時間を確保し、栄養バランスの取れた食事を心がけるなど、万全の体調で臨めるように準備しましょう。
しんどさの正体は「未知」への不安。成長の時系列を理解する
未経験から経理に転職した人が感じる「しんどさ」の多くは、「この状況が永遠に続くのではないか」という未知への不安から来ています。しかし、多くの先輩経理が通ってきた道であり、そのしんどさには明確な「賞味期限」があります。ここでは、一般的な1年目と2年目の変化を見ていきましょう。
【1年目:インプット期】「分からない」しんどさに耐える1年
- 最初の3ヶ月:専門用語が飛び交う会議は宇宙語に聞こえ、先輩の説明も一度では理解できない。質問すること自体が怖く、毎日が五里霧中の状態。最も精神的にしんどい時期。
- 4~6ヶ月:「仕訳」「売掛金」など、頻出する単語の意味が分かり始め、簡単な伝票入力なら一人でできるようになる。ただし、初めての月次決算では、スピードと量の多さに圧倒される。
- 7~12ヶ月:初めての年次決算を経験。日次・月次・年次の業務が一通り繋がり、ようやく仕事の全体像が見え始める。「分からない」というしんどさから、「やることが多くて忙しい」という、しんどさの“質”が変化してくる。
【2年目:アウトプット期】「やりがい」へと変わる1年
- 13ヶ月~:2回目の決算期を迎える。前年の記憶があるため、「去年はこの時期に、この資料が必要だったな」と先回りして準備ができるようになり、業務が格段にスムーズになる。
- 18ヶ月~:新しく入ってきた後輩や他部署のメンバーに、簡単な業務を教える機会が出てくる。「人に教える」ことで、自分の知識が整理され、成長を実感できる。
- 24ヶ月~:日次・月次業務はほぼ一人で完結できるように。「しんどい」という感覚は薄れ、業務を正確に遂行する「責任感」や、会社を支えているという「やりがい」へと変わってくる。
多くの経理経験者が「辞めるなら、最低でも2年目までは続けてみてから判断した方がいい」とアドバイスします。なぜなら、1年目のしんどさは「未知」ゆえの一時的なものであり、2年目以降は見える景色が全く変わってくる可能性が高いからです。
経理に向いている人の性格やスキル
経理に向いている人には、以下のような特徴が見られます。
| 性格・スキル | 理由・活かせる場面 |
|---|---|
| コツコツ物事を進めるのが得意 | 仕訳や集計など、地道な作業を正確に進められる |
| 数字に苦手意識がない | 取引金額や帳簿の管理で数字を扱う機会が多い |
| 報告・連絡・相談ができる | トラブル時の迅速な共有や上司への確認が重要 |
資格の有無よりも、誠実さ・几帳面さ・責任感といった基礎的な仕事姿勢が評価されやすい職種です。
経理に向いていない人の傾向
もちろん、すべての人が経理職にフィットするわけではありません。次のようなタイプは、経理業務でストレスを感じやすい傾向にあります。
– ミスに過度な恐怖心を持ってしまう
– 作業のルールや手順に縛られるのが苦手
– 数字を見ると拒否反応が出る
– 自己判断が多く、確認作業を省略しがち
ただし、これらの傾向があるからといって「絶対に無理」というわけではありません。業務に慣れることで克服できるケースも多いのです。
自己分析で向き不向きを見極める
経理職への適性を確認するには、過去の仕事・性格・価値観を整理する「自己分析」が有効です。
以下は簡単にチェックできるポイントです。
| チェックポイント | 確認のヒント |
|---|---|
| 過去に数字を扱う業務をしたことがある | 売上管理、レジ業務、在庫管理なども含まれる |
| スケジュールやタスク管理を丁寧にしている | ToDoリストや手帳を使って日々の管理ができる |
| 慎重に確認してから動く習慣がある | 「思いつきより確実性」を重視するタイプかどうか |
現役経理担当者に聞いた「未経験時代のしんどさと、その乗り越え方」
ここまで様々な対処法をご紹介しましたが、「本当に乗り越えられるの?」と不安に思う方もいるでしょう。そこで、実際に未経験から経理に転職し、今では第一線で活躍している方々に「未経験時代、何が一番しんどかったか、そしてどう乗り越えたか」を伺いました。
【Aさん・20代女性・入社2年目(元・販売職)】
「最初の3ヶ月は、毎日泣きながら帰っていました」
「特に『仕訳の意味が分からない』『先輩の説明が呪文に聞こえる』のが本当に苦痛で…。でも、悔しくて、毎晩お風呂で簿記3級のテキストを読み返し、分からない用語は全部ノートに書き出して自分なりの言葉で意味をまとめる、というのを続けました。そしたら、半年経った頃には、点と点が繋がるように理解できるようになって。『あの時の苦労は何だったんだろう』って。今では後輩に仕訳を教える立場になり、やりがいを感じています」
【Bさん・30代男性・入社1年目(元・営業職)】
「『質問しまくる』のが一番の近道でした」
「営業から経理に転職して、最初は『専門用語の多さ』と『ミスが許されないプレッシャー』が想像以上にしんどかったです。でも、営業時代に培った『分からないことは知ったかぶりせず、素直に聞く』という姿勢だけは貫こうと決めていました。忙しそうな先輩にも勇気を出して質問しまくったら、意外と『いい質問だね』と丁寧に教えてくれて。1年経った今、決算業務の一部を任されるようになり、『会社の数字を支えている』という営業時代とは違う実感があります」
【Cさん・40代女性・入社3年目(元・一般事務)】
「『完璧を目指さない』と決めたら、楽になりました」
「未経験で40代からの転職だったので、若い子に比べて覚えるスピードが遅いことに、ものすごく焦りを感じていました。でも、ある時上司に『完璧じゃなくていいから、分かることから一つずつ確実にやっていこう』と言われて、肩の荷が下りたんです。それからは、背伸びせず、自分のペースで着実に業務を覚えることに集中しました。3年経った今、月次決算まで一人で回せるようになり、この仕事を選んで本当に良かったと思っています」
経理未経験でしんどいと感じた時の選択肢
経理の仕事が「合わない」「つらい」と感じたとき、すぐに「辞める」と決断する必要はありません。まずは、その「しんどさ」を乗り越えるための工夫ができないか試してみましょう。ここでは、多くの先輩経理も実践してきた、しんどい時期を乗り越えるためのモチベーション維持法と、それでも難しい場合の具体的な選択肢をご紹介します。
しんどい時期を乗り越える5つのモチベーション維持法
経理未経験の最初の1年は、誰にとっても試練の時期です。しかし、以下の方法を試すことで、モチベーションを維持し、成長への道を切り開くことができます。
- 小さな「できたこと」を記録する
「今日は一人で仕訳入力ができた」「先輩の説明が少し理解できた」など、どんなに些細なことでも構いません。日記やメモに自分の成長を記録してみましょう。1ヶ月後に振り返った時、着実に前に進んでいる自分に気づき、自信を取り戻すことができます。 - 長期的なキャリアビジョンを描く
「3年後には月次決算を一人で回せるようになる」「5年後には経理のプロとして市場価値を高める」など、少し先の未来の目標を設定しましょう。目先のしんどさも、その大きな目標を達成するための「必要なプロセス」だと捉えられるようになります。 - 同期や仲間と悩みを共有する
同じように未経験で入社した同期や、SNS・オンラインコミュニティで同じ境遇の仲間を見つけて、悩みを共有してみましょう。「しんどいのは自分だけじゃないんだ」と知るだけで、気持ちは驚くほど軽くなります。 - 次の資格取得を目標に設定する
日商簿記2級やFASS検定など、次の資格取得を具体的な目標に設定しましょう。日々の業務と学習内容がリンクし、「実務のために勉強している」という意識が生まれることで、仕事へのモチベーションが維持しやすくなります。 - 意識的に「経理から離れる」時間を作る
忙しい時期こそ、意識的に休息を取り、趣味や運動でリフレッシュする時間を確保することが重要です。頭を一度リセットすることで、新たな気持ちで仕事に向き合えます。燃え尽き症候群を防ぐことが、長期的なキャリア形成には不可欠です。
これらの方法を試しても状況が改善しない場合は、我慢し続ける必要はありません。自分に合った環境や職種を選び直すことで、ストレスを減らしながら働き続けることも十分可能です。
経理から他職種に転職した事例
もちろん、経理の経験を活かして別職種へキャリアチェンジする人も少なくありません。以下は実際にあった転職事例です。
| 前職(経理) | 転職後の職種・理由 |
|---|---|
| 経理アシスタント(1年目) | 人事職へ転職。「人と関わる仕事がしたい」との思いから |
| 総務経理(2年経験) | 経営企画へキャリアアップ。数字管理の知識が評価された |
| 会計事務所で経理補助 | 営業職に転職。丁寧な説明力や資料作成スキルが強みに |
【未経験から経理への転職方法】成功のコツ・必要なスキル・体験談の総まとめ
未経験OKの派遣やパートも視野に入れる
「経理職=正社員」という固定観念は必要ありません。実際に、派遣やパートといった形で経理経験を積む方も増えています。
派遣やパートのメリット
– 時間や勤務地を柔軟に選べる
– 業務範囲が限定されているため覚えやすい
– 実務経験を積んでから正社員を目指せる
現在の転職市場では、実務未経験でも日商簿記3級とやる気を示せば、派遣求人への応募は十分可能です。
転職エージェントで環境改善を図る
そんな時に頼りになるのが、転職エージェントの存在です。経理職に詳しいエージェントであれば、以下のようなサポートを受けられます。
| サポート内容 | 得られるメリット |
|---|---|
| 経理業務の実態や職場の雰囲気を教えてくれる | ミスマッチの予防になる |
| 求人票の読み方や比較ポイントを解説 | 自分に合う職場を見つけやすくなる |
| 面接や書類対策のアドバイス | 選考通過率が上がる |

よくある質問
Q: 経理に向かない性格は?
Q: 経理は何年で慣れますか?
Q: 経理事務の離職率は高いですか?
